MS2000が来るまでのお話・・・


それは突然の出会いでした。暗闇に浮かび上がる紅いインジーケータ・ランプ、ずらりと並んだツマミ、ウッド・サイド・パネル・・・・・キーボード・マガジン誌に掲載された広告を見て僕は驚愕しました。これは紛れもない新作のアナログ・シンセだ!
そしてそのネーミング=MS2000、新世紀を象徴する2000の前に冠されたMSの文字。そう、あのKORG MS-10、MS-20といった名機に付けられたあのMS。

KORGのMSが蘇ったのだ・・・・。

僕はあっというまにそのルックスに惚れ込んでしまいました。
ツマミとランプが並んだパネルは僕を魅了するには十分すぎる要素でした。しかし、その「出会い」以前にも、アナログ・モデリング・シンセは各社から発表されてましたし、海外からも純正のアナログ・シンセも発表されていました。そして何より当のKORGから、アナログ・モデリング・シンセのEA-1が既に発表されていましたから、その音源や機能そのものはそれほど「驚愕」では無かったのかも知れません。しかし、僕が圧倒的に惹かれたのは、その機体の存在感だったのです。44鍵というコンパクトなボディに詰まったアナログ式のインターフェイス。ディープな色合いのパネル面。それら、おそらくあのKORG MONO/POLYを踏襲したであろうデザインと最新のテクノロジーが作り出す音(想像・笑)。「これは使える。いや、使ってみたい」、そして「そばに置いておきたい!」と強く思ったのでした。それはMacintoshコンピュータに出会った時の衝動と同じものでした。確かに4音ポリという限定された機能は他機種からみれば見劣りするものだったかも知れません、しかし、その「機能」を越えた 「存在の美」が僕のイマジネーションを強烈に刺激したのでした。 当時僕はKORG MONO/POLY、MS-10、700s、Roland SH-2 と言ったアナログ・シンセは持っていたのですが、MIDI化してない事もあって(Roland JUNO-106を持ってましたけど、調子が悪くて今も眠っています)、それらの音を使いたい時にはサンプリングして使ってまして、CV→MIDIインターフェイスを買おうかと思ってた所でした。が、結構良い値段がするので諦めていたのです。そこに現れたMS2000。欲しくならない訳がありません 笑。しかし、その値段をみると・・・99,800円也(現行のKORGのカタログにはオープンプライスとなっています)。貧乏な僕にはホイホイと買える値段ではなく、心の奥に憧れを秘めたまま、この思いは封印したのでした。その時キーボード・マガジンの付録の「MS2000サウンドマニュアル」みたいな冊子もさっさと捨ててしまったのです・・・・。しかし、楽器屋でMS2000を見かける度に触ってしまい、思った通りのサウンドがどんどん作れて行くこのエレガントな楽器に思いは募るばかりでした。


そして時は流れ、2002年の春になりました。いくつかの仕事をこなして、小金持ちになった僕は新しい機材を買おうと思い物色を始めていました。勿論MS2000も狙ってましたが、新品は高すぎてその「小金」から生活費等をさっ引いてみると少しばかり、いや、かなり予算が足りませんでした。「やっぱり中古でも2000が欲しい。でも予算内で納めるなら2000Rか・・・」等と頭を悩ませていました。
そんな時、知人のNさんから「家の裏の公園に桜が咲いたので花見をしよう」とのお誘い。Nさんとは旧知の仲で、音楽の趣味も合い、ずいぶん前になりますが、 Rolandのアナログ・シーケンサーMODEL-104を頂いた事もあってゆっくり音楽話をしたいなと思っていたので出かけて行きました。僕を招き入れた、Nさんの部屋には、手製のWINDOWSマシン、PS2等が置かれていました。そして僕は発見したのです。そこにあのMS2000が置いてあるのを。「あー!MS2000がある!」思わず叫んでしまいました。Nさんによれば東京の友達から安く譲ってもらったとの事。「僕これめっちゃ欲しいでんすよー。今中古で探しているんです!」と目をキラキラさせて言いました(いや、ほんとあの時はきっと少女漫画の目になってたと思います)。その熱意(?)が通じたのか、「僕あんまり使い方解らへんから、使いこなせる人に使ってもらった方がええと思うんや。持って帰る?」と Nさん。「ホンマええんですか?でもただという訳にはいかへんから、買いますよー」ドキドキ・・・・「ほんなら○万でええわ」「マジっすか!?!?!買います!(即決)」。ここではあえて値段を書きません。だってどこの中古屋探してもネット・オークション探してもこんな値段で買えませんから・・・・・。


僕はついにあの憧れのMS2000を手にする事が出来ました。成せば成る。初志貫徹。3歩進んで2歩下がる(違う)。いや本当に嬉しくて、MS2000のために作業部屋の模様替えもしたし、ケーブルも買い換えたし 笑。艱難辛苦を乗り越えて新しくパートナーとなったMS2000と共に、僕は「音楽」というまだ見ぬ地へ冒険の旅に出るのでした(何のこっちゃ)。人生楽ありゃ苦もあるさです(意味不明)。
 めでたく所定の場所に収まったMS2000.。
 ここにはかつて、Roland αJUNOが置かれていた場所なのであった・・・。
 下はマスターキーボードとして使ってるYAMAHA SY-77。
◆コラム KORG シンセサイザーと木製サイドパネル◆

木製サイド・パネルというとKORGとイメージがありますが(多分僕だけ)、1973年に発売された国産初の量産型シンセ、700(=MINI KORG)からの伝統的な仕様なのだと思います。KORGシンセサイザーの歴史をざっと見ても700S、800DV、770、シグマ、トライデント、MONO/POLY、POLY6とデジタル時代に突入するまでの代表的な機種は木製のサイド・パネルが採用されています。
800DV TRIDENT
PSシリーズに至ってはモジュール、鍵盤とも木製パネルに覆われています(笑)。同じ木製パネルと言っても、機種毎に材質・取り付け方法が違っています。僕の持っている700S、MONO/POLY、MS2000の各機種を見てみましょう。
まず700Sですが、材質としては何枚かの木材をサンドイッチして一枚にしていて、一番外側には厚さ1mmほどの材料が張り付けてあります。表面はニス仕上げ。本体へは3本のボルトで取り付けられています。無垢材こそ使われていませんが、優美で落ち着いた雰囲気を演出してます。
MONO/POLYのものは、厚さ1.5cmと700Sと同じなのですが、なぜかゴツイ印象を受けます。材料の名称は知らないのですが、細かい木片を圧縮したよな材質で出来ており、その上に木目をプリントした材料を張り付けてあるという、なんちゃって木製パネルなんですね、これが(色々ステッカーが貼ってありますが、見ないように・笑)。おそらく、この時期の製品は同じ様なパネルが使われているのではないでしょうか?高級感はあるのですが、ちょっと重すぎる印象です。僕のは長年の使用によって、角が取れて来て、木材がポロポロ取れ、プリント材も剥がれて来てます。本体への取り付けははめ込んであるようで、ボルト・ビスの類は表面上見えなくなっています。
MS2000、これは無垢材ですね。厚さ6mmの小さめの材料で、色も他機種に比べてライトな感じ。MS2000の軽やかさを一層引き立てています。仕上げもニスがうっすらと塗られていて、手触りも良く、美しいです。惜しいのは本体への取り付けで、ボルト3本で止められているが丸見えで、ここは本当に残念です。しかし、ここが本体と同じスチールだと面白くないデザインになってたと思います。この木製パネルがある事によって、どこと無く温かく、何よりKORGの名機達を思い起こさせ、「シンセサイザーという感覚」を呼び起こしてくれるのだと思います。パネルの面の取り方なんかも丁寧で「クラフトマンシップ」を感じますね。

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